実は今年からmy cube新館をオープンして記事の移植を進めています。
サイトの見た目が整い次第、こちらでも告知します。
とりあえずそれまでは、自作の発表作の整理のため、旧ブログに記事だけはあげていきます。
詰将棋パラダイス2021年11月号
大学
誤4 無12
A15 B2 C0
平均2.88
宮○敦史―まさかの初手や、44銀に対する35桂(歩?)、作意の87桂など、非常に中身の詰まった曲詰。傑作。
占魚亭―下半期の〆は「メ」の炙り出し。35銀の捌きが好感触。
かなり難解な炙り出し。
まず、初手44銀が普通だが、これには35歩合とされ……

同馬、67玉、58金、同馬、78銀、76玉、77金、65玉で、

中合の効果で25龍が王手にならないので逃れている。
そこで、初手はわざわざ開王手をしないように46銀と非効率に使うことで、35歩合を防ぐというちょっとした構想になっている。

これなら25龍で簡単だ。
そこで65玉ではなく85玉と逃げるわけだが、89龍と回り、74玉、73銀成でさらに悩ましい。

①73同玉から考える。これには51馬、64玉、84龍、65玉、66金、同玉、86龍、76合、84馬、56玉、68桂、同馬、76龍以下、39手くらいで詰む。
続いて、73銀成に②64玉を考える。84龍といきたくなるが、それは65玉、66金、同玉、86龍に76金合で惜しくも詰まない。正しくは55銀で、同玉、46馬、65玉、57桂、同馬、85龍、75金(飛)合、同龍、同玉、57馬と駒がたくさん入手できて詰む。
そこで、③65玉を考える。これには57桂と捨て、同馬は85龍、75馬(質駒の事前退避)、76金、56玉、57銀、47玉、46馬、58玉、67銀、49玉、89龍、59金合(銀合は売り切れ)、58銀以下詰み。したがって、57桂は取れず56玉とかわすことになるが、67銀、47玉(同馬は同金、同玉、34馬、56歩合、78角以下)、58銀で捕まってしまう。

たくさん変化を追いかけてわけがわからなくなってきている頃かと思うが、この局面が一番重要。作意をすでに並べた方ならもうピンときているはず。

そう、89龍と回った局面で87桂合を入れておけば……

58銀に38玉と潜り込んで、これが唯一の逃れとなっているのだ!
強力な龍をわざわざ近づけてしまう不利感もあり、かなり見えにくい中合になっていると思う。

さて、87桂合に同龍、74玉、73銀成、65玉、66金、同玉と進んだ局面。ちなみに、87が歩合だとここから33馬、75玉に76歩と叩けて早い。
桂合の場合は違う攻め方をする。つまり、ここで46銀が邪魔駒になっているので、57銀、75玉(65玉も可)、66銀、同玉と原型消去をしてから77銀と上がっていくのがちょっとやりにくいが正解。振り返ってみれば、この46銀は初手で中合回避のために仕方なく置かされたもので、それをこのタイミングで消去するというのが狙いの伏線回収である。
以降の手順は最初の動く将棋盤で並べてもらえば結構だが、それほど簡単というわけでもない。ともかく、最後は「メ」の炙り出しとなる。

最初はもちろん都詰になるように作ろうとしていたが、最後の金合のところで変化が割り切れなかった。一段ずらしたら展望が開け、ここまで逆算できたという裏話。
「メ」の炙り出しは収束のパターンが限られていて、なかなか新作と呼ぶにふさわしい逆算ができないのだが、今回は一段ずらしのおかげで大成功だった。