A級に上がれませんでした

A級に上がれなかった。
というのも、去年の記事で、「またすぐにA級に戻りますので云々」と大口を叩いているのである。

順位戦でも短コンでも、作者が「まあこれくらいでいいだろう」と思って出した作品が図らずも昇級だったりシード獲得したりするものだ。
去年、余詰降級となった自作も、そんなに大した作じゃないと思っていたが、もし完全なら点数的には準優勝だったのだ。
15手詰はいくつか在庫があるし、今年も平常運転でいけば昇級できると高をくくっていた。

が、今年のB級順位戦。実はメンツがなかなか強敵だった。6月の出題稿で小林(敏)・小林(尚)・馬屋原と各氏が名を連ねているところを見て、雲行きが怪しく思えてきた。
そこで柿木に出題作を一通り解かせてみると、あっ、これはまずいかもしれないとようやく危機感を覚えた。
以下、当時の回想形式でお送りする。

自作は⑤。嫌味のない初形からオール捨駒で玉方桂生も入り、収束の大駒の動きも活き活きしていて解答者ウケは悪くないはずだ。

他に手筋物はといえば⑦と③。⑦は残念ながら順位戦では降級する運命にあるので、ライバルとしては除外していい。③は入玉形からバッテリーを軸に風が吹き抜けるさわやかな作だが、インパクトのある手があるわけではなく、昇級は難しいだろう。

⑥。徹底した打歩詰をめぐる不成の好防で、印象はいい。やや配置は重いが、昇級してもおかしくない。自作と桂生が被ってしまったのが痛いところ。

①。これはなかなか面白い。玉方駒の軌跡を攻駒がなぞる、チェスプロブレムの用語にあってもおかしくないテーマ。それも、馬は移動合で、そして角は限定打から成り捨てで動かしているのがポイント高く、初形と詰上りの対比もできている。馬屋原氏に違いない。
双玉と配置の広さ、紛れの少なさが解答者に嫌われる可能性が無きにしもあらずだが、昇級候補。

そして④。これは初形を見ただけで分かる。100パーセント小林(尚)氏だ。手順も銀の2段階スイッチバックで、まさに完璧な内容。これには勝てなくても本望というもの。

残る不気味な存在……それが②だ。香成らせで19桂を打つという構想はとても面白い。金をボロっと取る前提なのが無理をしている印象だが、序2手の応酬で見事それを帳消しにしている。評点の予想がつかない。もし香成らせが解答者の盲点に入ったなら、昇級の可能性も高いだろう。





……というわけで、これが6月号を読んでいたときの私の反応である。
⑦降級、④昇級は確実だが、残りがどうも決め手に欠けるというか、争いが熾烈という感じだ。2位に②、そして3位に自作ときて、ギリギリ昇級できないか……というのが希望的観測だった。

作者予想は、①馬屋原氏、④小林(尚)氏は確定として、⑦利波氏、③芹田氏と置く。芹田氏は収束の両王手・開王手からの逆算が多く、入玉形もないわけではないのでこう予想した。となると残りは中澤氏・小林(敏)氏だが、中澤氏はまだ作風を語れるほど作品数がないので消去法になるが、小林(敏)氏が②や⑥を作るのはちょっとイメージにない。しかしそれ以外の全体を見ても、氏らしい作品がないのだ。
一応、去年のB級の小林(敏)作を見ると、駒取り省みずに構想っぽい手順を表現しようとしている傾向が見られるので、②小林(敏)氏、⑥中澤氏と予想した。

そして9月号が届き……作者予想は③⑦が逆のこと以外的中していたものの、自作は昇級を逃す結果に終わった。
この自作に関してはまた別記事で書くとして、わりと気に入っていただけに昇級できなかったのは無念。そして③が昇級というのも驚き。
解説を読むと、なるほど移動合や中合を駆使して逃れる紛れがあり、これは巧い。柿木で上辺だけ鑑賞しただけでは味わえないものがあったに違いない。

というわけで、また来年、A級に復帰したいと思う。





……と、せっかくブログを更新したついでに、今月号はいろいろ書きたいことがあったのでそれを書くことにする。

まず、私は順位戦がなかなか好きだ。指将棋の順位戦さながら、詰パラの中で唯一、真正面から勝負が行われているという感じがある。
エントリーしたからには毎年作品を出さないと、容赦なく、目に見える形でランクが下がっていき、最後にC級から落ちるとその後の創作活動そのものがなくなってしまうという作家も少なくない。
逆に、新鋭作家がD級からエントリーし、あれよあれよとA級優勝を成し遂げることも珍しくない世界だ。
今年、私はA級を解説しているが、天内氏がそれを達成したのは見事というほかない。

そして、作者予想も順位戦の楽しみの一つ。
採点していて、今年は1名しか予想を書いてくれた方がいなかったのだが、なんともったいない。是非とも、挑戦してみてほしい。





C級順位戦。2つほど、取り上げたい作品がある。

まずは②三輪作。



飛車の最遠不成往復。
これは明らかに、2019年B順位戦小林敏樹作を改作大魔王した作品である。




最遠不成の変化処理と、桂捨てで香を吊り上げ歩打、のモジュールは非常に似ているというか、ほぼ使い回し。
小林作に比べて、三輪作は邪魔駒消去を絡めてノンストップの往復にしていること、そして収束で取らず手筋の馬捨を入れていることが進歩といえるだろう。
小林作は構図感覚の良さが売りなのと、9段目から1段目まで戻ってくることに利がある。
私の好みは三輪作の手順構成なのだが、43香32飛の配置はしんどいにも程があるので、ノンストップのスイッチバックは諦めつつも大駒捨ての収束にはつなげるよう努力するのだと思う。





続いて、⑦大崎作。



33角~55角成で歩を消去して58香を打つと、その角を中合される。そして再び33角~55角成が繰り返されるという構成が素晴らしい。B級の馬屋原作とのシナジーもなんとなく感じる。
悔やまれるのは、33角の打場所が2回とも非限定なこと。詰上りでは消える駒なので気にしていないと作者は言うが、メインテーマの部分なのでこれはやはり限定したいところ。かといって22歩などと置くのはダサすぎる。
あとは、配置がちょっと汚い。この作者は、「推敲は老後の楽しみにとっておく」というスタンスを宣言しており、私はそれに猛反対なので、今回はその楽しみを奪ってみることにする。


こちらが鈴川による勝手な改作図。
まず構図を調整することにより、13角・49香を盤端を利用して限定した。これで13角~46角成の動きが大きくなるので、狙いの演出に華を持たせている。盤端利用による限定は、詰将棋の神様がそう作れと言っているということなので、これに従わない手はないだろう。
だが、収束で2枚目の角を捨てることは困難になったので、代わりに飛車・銀を捨てて宙ぶらりんのモデルメイトに変更。テーマ性は少し削がれたとは思うが、それを言うなら原図で角打が非限定なのは私の感覚ではもっと嫌だ。
初形盤面が2枚減り、ちょうど15手詰にもなったので、これで発表していたらどういう結果になっていたか気になる。





その他の9月号詰パラ言及。

・同人室①海老原作。かわいい手順ながらもしっかり「伏線」していて、非常に良い。

・同人室⑥山田作。小品ながらも好き。55桂の消去が鍵になるのは同氏の短編名作選263番(2001年6月詰パラ)を彷彿とさせる。

・やさ院①渡辺作。タイトルが実に秀逸ですべてもっていかれた。この作者は内容面でも今後引き続き注目していきたい。

・やさ院③岩村作。一発ネタが冴え渡っている。「全ての歩を取りたくなる心理が働くように、序に金追いを入れて歩の顔を一度立たせたのが工夫」、これは詰将棋の真髄を捉えていると思う。収束が序と対称的に歩の裏側の階段を利用する趣向になるのも素晴らしい。

・デパート②井上作。作者得意のミニ・リピート趣向は、どこから発想が湧いてくるのかいつも気になる。

以上。

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No title

お褒めに預かり光栄です。
ありがとうございます。
でもそんなに私の図ってモロバレですか?(笑)

No title

>小林さん
モロバレでしたね。
左上の玉配置、桂香の持駒の多さ、翻弄……と、小林さんの作風を詰め込んだような好作でした。
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my cubeへようこそ。詰将棋のブログです。駒を並べてアートが表現できるって素敵なことじゃありませんか? 詰キストの方もビギナーの方も楽しんでいってください。

Author:鈴川優希
1997年生まれ。月刊誌「詰将棋パラダイス」に作品を発表している詰将棋作家です。詰将棋は小学生の頃から作り始め、2009年5月に詰パラ初入選。2015年12月に最年少同人入り(入選100回)。半期賞9回、看寿賞1回。2016年4月~2020年6月「ちえのわ雑文集」世話役を務めました。現在は入選200回を目指す傍ら、順位戦や短コンの解説をたまに担当しています。

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2015年(第n回)・2016年(第φ回)に当ブログで開催。使用駒数11枚以上、タイトル必須という条件で募集した作品を出題し、解答者に評価してもらうという企画です。結果発表はニコ生で行いました。作品の結果稿はブログ右袖のカテゴリーからご覧いただけます。なお、この裏短コンはほっとさんのブログ「詰将棋考察ノート」に受け継がれました。

今週の詰将棋・
詰将棋ウィークリー

今週の詰将棋は2009年7月からの2年間100題。詰将棋ウィークリーは1012年3月からの50週は幻想咲花さんとのコラボ、それ以降は鈴川単独の出題で2014年3月まで、#100をもって終了しました。解答していただいた方に感謝します。
※81puzzler閉鎖につき詰将棋ウィークリーの記事にはリンク切れが多いです。

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